はじめに
部門別会計は責任会計制度の基礎となる重要な概念です。
責任会計(responsibility accounting)とは、会計システムを管理上の責任に結びつけ、職制上の責任者の業績を明確に規定し、もって管理上の効果を上げうるように工夫された会計制度をいい、管理会計に使用されます。
部門別会計は原価計算においても不可欠です。原価計算は、費目別計算、部門別計算、製品別計算によって行われ、部門別計算は、費目別計算で把握された原価要素を原価発生の場所別に分類集計する手続きをいいます。
責任会計においては、責任センター(responsibility center)を定めて、業績の結果(実績値)と計画値(予算)を対比、測定することで管理します。責任センターには、原価センター(cost center)、利益センター(profit center)、投資センター(investment center)などがありますが、部門別会計では原価センターを最小単位として設定し、原価センターと収益センターをまとめて事業部などの利益センター、投資センターを構成します。社内取引の仕組みを使って原価センターをアメーバ経営などのミニ・プロフィット・センターとすることもできます。
ツバイソPSAでは責任センターの管理のために、【案件】、【部門】、【セグメント】を使用することができますが、組織上の責任者と対応させた責任センターとしては部門を使用します。案件は複数部門から人が集まり有期のプロジェクトとしての責任センターとして、セグメントは、マトリックス組織など部門と別軸で責任センターを設置する場合あるいは分析のために使用します。
業務プロセスにおける部門(会計)の自動連携
責任会計上の部門(以下、組織上の部門と区別するために「部門(会計)」といいます。)は、仕訳に紐づいて勘定科目とともに会計システムに計上、集計されます。責任センターに正しく集計するためには、業務プロセスの上流から会計システムに自動付与、連携する仕組みが必要であり、この理解が重要です。
ツバイソPSA、ERPにおいては、標準では下図のように部門(会計)が連携します。(カスタマイズも可能です。)
まず、業務プロセスの起点となるオブジェクト別に操作者の所属する部門が自動設定されます。
- 売上プロセスの起点:案件
- 調達プロセスの起点:調達依頼
- 制作プロセスの起点:制作指図
- 各人の立替経費の申請・精算:経費精算
操作者が複数の部門に所属(兼務)する場合は、1社員が複数の社員部門マスタ(社員と部門、部門(会計)の組み合わせ)を持ち、これを切り替えることで部門(会計)が正しく自動設定されます。
売上プロセスにおける部門(会計)連携
売上責任のある営業部門などが案件を作成する際にその担当者の部門(会計)が案件に設定されます。その後、受注を作成したときはこの案件の部門(会計)が受注の部門(会計)の初期値として連携されます。受注事務は事務部門が行うとしても部門(会計)は売上責任を持つ部門が設定されます。
受注の部門(会計)が売上に連携され、ERPの債権、仕訳に連携されます。経営の要の業務である「受注」と「発注」を重点的に統制することで後の処理が正しく自動化される仕組みとしています。
調達プロセスにおける部門(会計)連携
調達プロセスにおける要となる業務は「発注」です。この発注の部門(会計)が仕入経費を介してERPの債務、仕訳に部門(会計)が連携します。
発注の部門(会計)は発注事務を行う担当部門ではなく、その会計責任を負う部門が設定されなければなりません。
発注レコードの部門(会計)は、作成元のレコードの部門(会計)が転記されます。オブジェクト別にまとめると以下の通りです。
- 案件から発注を作成:案件の部門(会計)
- 受注から発注を作成:受注の部門(会計)
- 制作指図から発注を作成:制作指図の部門(会計)
- 調達依頼から発注を作成:調達依頼の部門(会計)
制作プロセスにおける部門(会計)連携
制作プロセスの担当部門は制作にかかるコストの会計責任を負います。第一義的には制作指図が責任センターとなりますが、当該制作指図のために発生する調達プロセス(経費精算含む)にかかるコストの会計責任を負うため、上述の通り、制作指図の部門(会計)を調達の部門(会計)の初期値として連携します。
経費精算における部門(会計)連携
経費精算の申請者が所属する部門が会計責任を負うため、申請者が所属する部門を部門(会計)としてERPに連携します。ただし、制作指図に関連する経費精算は当該経費精算の承認者であり会計責任を負う制作指図の部門(会計)が経費精算の部門(会計)として連携され、最終的にERPに連携されます。
部門と部門(会計)
これまで責任会計上の部門として「部門(会計)」を使用してきましたが、ツバイソPSAでは、部門(会計)とは別に組織上の「部門」が存在します。
組織上の部門は承認プロセスにおける承認者の自動設定に使用し、部門(会計)は会計システムに連携するための責任センターとして使い分けができるようにしています。組織上の部門と責任センターとしての部門は同じ場合が多いですが、例えば、売上責任を持つ営業部門が見積の承認を行い、受注は事務部門が承認を行う場合は、承認は各部門で行いますが、売上数字の会計上の集計先は営業部門となります。
このような違いから部門は全トランザクションのオブジェクトに存在しますが、部門(会計)は、会計システムに連携する4オブジェクト(売上、仕入経費、原価計算票、経費精算)(上図の赤い四角)に存在すれば良いことになります。ツバイソPSAでは、会計システムに連携するオブジェクトを統制するためこれらの元になるオブジェクト(受注、発注、制作指図)を承認プロセスによって統制できるように設計しています。