はじめに
DX、ペーパーレスを進めるために電子帳簿保存法の適用は必須です。ツバイソPSA、ツバイソERPを利用することで、電子帳簿保存法に適用し、紙保存にかかるコストを削減することができます。
令和3年度の税制改正において、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成 10 年法律第 25 号。以下「電子帳簿保存法」といいます。)」の改正(令和4年1月1日施行)が行われ、大幅に利用しやすくなりました。様々な改正がなされましたが、訂正削除履歴が残るあるいは訂正削除できないシステムであればタイムスタンプが不要となったこと、事前の税務署長による承認が不要となったことが大きな改善です。
ここでは、ツバイソPSA、ツバイソERPのIT統制機能を適正に運用することでタイムスタンプを使用せずに電子帳簿保存法に対応する運用方法を整理しています。
改正電子帳簿保存法の基本
以下の国税庁の「電子帳簿保存法Q&A(一問一答)」の図を使って基本を説明します。以降の説明の正しい理解のためには基本が重要です。
まず、納税者は、国税関係帳簿書類(法人税法施行規則第五十九条第1項)(例示は下図を参照)を最大10年間保存する義務があります。したがって、電子帳簿保存法における電磁的記録による保存対象は、「国税関係帳簿書類」です。
国税関係帳簿書類は、下図のように「帳簿」(法第4条第1項)と「書類」に電子帳簿保存法上分けられています。さらに書類は「発行する書類」(法第4条第2項)と「受領する書類」(法第4条第3項)に分かれます。これらの分類によって電子帳簿保存法適用の要件が異なります。
大事なことは、上記の「帳簿」と「書類」は最終的に出力された紙を対象にしているということです。これに対して、下図点線の下の「電子取引」(法第7条)は、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項。)の授受を電磁的方式により行う取引(法第2条第5号)であって、紙は登場しません。それどころか紙で保存することは法律で認められていません。(法第4条の帳簿書類については、一部のみ電子帳簿保存法を適用することが可能です。)
したがって、同じ請求書や領収書であっても、紙で発行、受領すれば、下図点線の上側の条項の適用になり、PDFやテキストデータで発行、受領すれば下図点線の下側の条項が適用されます。電子帳簿保存法ではスキャンがよく話題になりますが、これは紙で受け取った「受領する書類」に限られた話なのです。領収書もPDFで受け取れば「電子取引」となり、スキャンの議論はありません。
ツバイソPSA※、ツバイソERPは、「帳簿」「発行する書類」「受領する書類」「電子取引」全てにおいて、タイムスタンプを使用することなく電子帳簿保存法の要件を満たして電磁的記録により保存することができます。
※ツバイソPSAは、削除保護機能を有効にすることでファイル添付追加機能の削除機能が不可となり、訂正削除要件を満たすことが可能となります。この機能は一度有効にすると変更できません。
設定方法については、「添付ファイルの削除保護機能を有効化する方法」をご確認下さい。
種類 | 電子データ保存 | タイムスタンプ | RobotERPツバイソ |
帳簿 | ○ | 不要 | ツバイソERP |
優良帳簿 | ○ | 不要 | ツバイソERP |
発行する書類 | ○ | 不要 |
ツバイソERP ツバイソPSA |
受領する書類 | ○ | 不要 | ツバイソPSA |
電子取引 | ○ | 不要 | ツバイソPSA |
詳細は以下を参照してください。
ツバイソPSA、ツバイソERPにおける運用方法
「帳簿」と「発行する書類」
「帳簿」と「発行する書類」は原則は紙に出力して保存ですが、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する場合は、以下の要件(規則第2条第2項第1号、2号)を満たせば電子保存できます。
【保存要件】
- システム関係書類等(操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
- 電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと
ツバイソERPから紙で出力できる仕訳帳、総勘定元帳、取引先元帳は、「帳簿」に該当し、貸借対照表、損益計算書は「発行する書類」に該当します。
ツバイソPSAから紙で出力できる注文請書、納品書、請求書、注文書、検収書、支払通知書は「発行する書類」に該当します。
→ツバイソERP、ツバイソPSAは、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成し、上記の要件を満たしますので、紙ではなく電磁的記録による保存が可能です。
優良な電子帳簿による過少申告加算税5%軽減
「帳簿」について優良な電子帳簿の下記の要件(規則第5条第5項)を満たし、所轄税務署長に届出書を提出している場合で、記録された事項に関して申告漏れがあった場合は、その申告漏れに課される過少申告加算税が5%軽減される措置が整備されました。
【保存要件】
- 電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
- →ツバイソERPは、訂正、削除に関する監査ログを取得し、確認することができますので、要件を満たします。
- 「帳簿」に係る記録事項の入力をその業務の処理に係る通常の期間を経過した後に行った場合には、その事実を確認することができること。
- →ツバイソERPは、全てのデータについて当社が提供するクラウドサーバにより保存を行い、当該クラウドサーバがNTP(Network Time Protocol)サーバと同期することにより、その「帳簿」に係る記録事項の保存日時の証明が客観的に担保されている状態にありますので、要件を満たします。
- 「帳簿」に係る電磁的記録の記録事項と関連する他の「帳簿」の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
- →ツバイソERPは、関連する帳簿が互いにリンクされ、辿れるようになっていますので、要件を満たします。
- 取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
- →ツバイソERPは、取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができますので、要件を満たしています。
ツバイソERPは上記の全てに対応していますので、所轄税務署長に届出書を提出することで、優良な電子帳簿による過少申告加算税5%軽減が適用されます。
「受領する書類」
「受領する書類」は上述の通り、紙で受領したものが対象です(PDFで受け取った場合は「電子取引」であり、対象外です)。これを電子保存する場合の要件が下記で、入力要件、スキャナ要件、タイムスタンプ要件など厳しい要件(規則第2条第6項)があります。これは、「帳簿」と「発行する書類」が自社で作成する内部証憑であり、そもそも証拠力が低いことに対し、「受領する書類」は外部証憑であり、証拠力が強い、すなわち内部統制において重要な書類であることを考えれば理解しやすいと思います。
【保存要件】
- 入力要件(以下のいずれか)
- 受領後、速やかに行うこと。
- 「書類」の受領後おおむね7営業日以内に入力する場合。
- その業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと。
- 「書類」の受領から、スキャン、入力までの各事務の処理(処理期間は最長2ヶ月)に関する規程の定めが必要。
- 他者が提供するクラウドサーバにより保存を行い、当該クラウドサーバがNTP(Network Time Protocol)サーバと同期するなどにより、その「書類」に係る記録事項の保存日時の証明が客観的に担保されている状態。
- →下記訂正削除要件を参照してください。
- 受領後、速やかに行うこと。
- スキャナの機能要件
- タイムスタンプの要件
- 上記入力要件と次の訂正削除要件を満たす場合は不要。
- 「書類」に係る電磁的記録の記録事項について、次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムであること。
(1) 「書類」に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
(2) 「書類」に係る電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。- →受領した「書類」はスキャンしてツバイソPSAの関連するレコードに添付追加します。これは追加のみが可能で、削除ができないため、上記の要件を満たすことになります。また、クラウドサーバにより保存を行い、これがNTPサーバと同期するため、保存日時の証明が客観的に担保されなければならないという要件を満たします。
- 「書類」に係る記録事項の入力を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
- →ツバイソPSAでは、受領した「書類」を添付追加するレコード(例:「支払」レコードに受領した請求書を添付、「経費精算」レコードに受領した領収書を添付」に対して承認を行います。承認を行わない運用だったとしても各レコードの(作成)担当者と責任者が明確に関連づけられ、アクセス権限を持っているためこの要件を満たします。
- 「書類」に係る電磁的記録の記録事項と関連する他の「帳簿」の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと。
- →「書類」を保存するツバイソPSAと「帳簿」を保存するツバイソERPは互いにリンクされ辿れるようになっているため、この要件を満たします。
- 電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。
- 取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
- →ツバイソPSAは、取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができますので、要件を満たしています。
「電子取引」
「電子取引」は、取引情報(取引に関して受領し、又は交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項。)の授受を電磁的方式により行う取引であって、紙を使わない取引を言います。具体的には、EDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含みます。)、インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引等を言います
「電子取引」で注意すべきことは、これまで見てきた「帳簿」「受領する書類」「発行する書類」と異なり、書面による保存は認められず、以下の要件(規則第4条第1項)を満たした電磁的記録により保存しなければならないことです(法第7条)。以下の要件を満たした電磁的記録を行なっていない場合は、たとえ紙に出力して保存していたとしても青色申告の承認の取消対象となります(総合判断の余地はあります)。
【保存要件】
- システム関係書類等(操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること。
- 電磁的記録をディスプレイの画面及び書面に、整然とした形式及び明瞭な状態で、速やかに出力することができるようにしておくこと。
- 取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができること。
- →ツバイソPSAは、取引年月日、取引金額及び取引先を検索の条件として設定することができますので、要件を満たしています。
- 真実性を確保する観点から、以下のいずれかの条件を満たすこと。
- 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプが付された後、当該取引情報の授受を行うこと。
- 次に掲げる方法のいずれかにより、当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すとともに、当該電磁的記録の保存を行う者又はその者を直接監督する者に関する情報を確認することができるようにしておくこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことを当該取引情報の授受後、速やかに行うこと。
ロ 当該電磁的記録の記録事項にタイムスタンプを付すことをその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに行うこと。 - 次に掲げる要件のいずれかを満たす電子計算機処理システムを使用して当該取引情報の授受及び当該電磁的記録の保存を行うこと。
イ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認することができること。
ロ 当該電磁的記録の記録事項について訂正又は削除を行うことができないこと。- →ツバイソPSAの電子取引機能を利用して自社が作成した電子取引の取引情報(発注書PDFなど)は関連するレコードに添付追加されます。これは追加のみが可能で、削除ができないため、上記の要件を満たします。
- →ツバイソPSAの電子取引機能を利用して取引先が作成した電子取引の取引情報(納品書PDFなど)は関連するレコードに添付追加されます。これは追加のみが可能で、削除ができないため、上記の要件を満たします。
- →取引先が自社で作成し、ツバイソPSAの電子取引機能を利用して関連するレコードに添付追加することにより受領した電子取引の取引情報(納品書PDFなど)は、追加のみが可能で、削除ができないため、上記の要件を満たします。
- →ツバイソPSAの電子取引機能を利用して自社が作成した電子取引の取引情報(発注書PDFなど)に取引先が受注確認を行うことで追記した受注確認日時などは電子取引の取引情報には該当しません。
- 当該電磁的記録の記録事項について正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程を定め、当該規程に沿った運用を行い、当該電磁的記録の保存に併せて当該規程の備付けを行うこと。
- →電子メールにより受領した電子取引取引情報(請求書PDFなど)は、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理の規程」を定め、ツバイソPSAの関連するレコードに添付追加することで要件を満たします。