はじめに
組織マネジメントにおいて小さな単位で独立採算による業績評価が行えると大きな力となります。この小さな独立採算の単位をミニ・プロフィット・センター(micro-profit center:MPC)と言います。京セラのアメーバ経営もMPCの一種です。
責任会計制度には、コスト・センター(cost center)、プロフィット・センター(profit center)、インベストメント・センター(investment center)がありますが、社員のモチベーション、経営者マインドの育成にはプロフィット・センター、インベストメント・センターが有効です。社内の組織に対してサービスを提供するコスト・センターを独立採算のプロフィット・センターとするために、市場原理を持ち込んで社内取引を行います。
独立採算管理会計の方法
まずは管理会計レポート「案件階層別セグメント部門別業績」をご覧ください。
これは、「笹塚カフェPOSレジ導入案件」という案件を営業部、制作部によって2つの案件として独立採算管理した結果です。営業部は売上高630,000円、売上原価600,000円で売上総利益30,000円となっています。一方、制作部は営業部から600,000円受注し、売上高600,000円、売上原価472,000円で売上総利益128,000円となっています。このようにそれぞれの案件、部門はプロフィット・センターとして独立採算管理されていることがわかります。
一方、案件全体としては単純に足し算すると売上高1,230,000円となり、内部取引600,000円分多くなります。これについては、社内取引という部門で売上高と売上原価が-600,000円計上され、案件としての総額では売上高630,000円、売上原価472,000円、売上総利益158,000円と正しく計算されています。
さらに、部門の他にセグメントとして東京エリアとして集計されていることがわかります。
ツバイソPSAでは、案件は3階層、部門とセグメントはそれぞれ5階層、セグメントは3種類で小さい粒度から大きな粒度まで複数の軸できめ細かな業績管理を行うことができます。
上述したミニ・プロフィット・センターは案件を使用することで、案件担当者、案件責任者、案件メンバーにより随時組成することができます。部門やセグメントよりも小さい単位で、組織構造に影響されず、流動的にプロフィット・センターを作れるメリットがあります。
社内取引の方法
上記で見たように、きめ細かな独立採算の管理会計は複雑です。これを日々の業務を行う社員が理解して手作業で間違いなく行うのは現実的ではありません。案件、部門、セグメントを間違えると管理会計数字全体が信頼できない数字となります。
ツバイソPSAには、普段の社外との取引を行うように社内で受発注、納品検収業務を行うだけで、自動的に管理会計の処理が行われる仕組みが用意されています。
まず、以下の全体図を確認してください。
上図の基本的な見方は、収益認識基準に対応した業務プロセスのDXパターンを参考にしてください。
案件1-1は社内への発注部門の営業1課が管理している案件、案件1-2は受注部門の制作部が管理する案件、社内取引統括案件は案件1-1と案件1-2をまとめる上位階層の案件です。最初は起点となる案件1-1しか存在せず、社内発注時に案件1-2と社内取引統括案件が自動的に作成されます。
業務プロセスで確認しましょう。営業1課の発注プロセスでは、社外へ発注するのと同様に「仕入先」に社内取引用の取引先を選択して発注します(オレンジの矢印)。これにより案件1-2とその受注、親案件1が自動作成されます。
制作部は、基本情報が登録された受注を承認し、制作業務、調達業務などを社外の取引先と同様に行います。完成後に営業1課に納品します(オレンジの矢印)。これも受注時の「得意先」が社内取引用の取引先となっているだけ社外への納品と同じです。
この納品により営業1課に検収が自動的に作成されます。営業1課は通常の社外からの納品物に対する検収と同様に検収業務を行います。
これ以降の売上、仕入経費の計上は管理部門が一括で行いますが、これも通常通り行います。その際に、社内取引の売上と仕入経費の作成をトリガーにこれを相殺する赤伝が自動的に作成されます(オレンジの矢印)。この赤伝の売上と仕入経費は社内取引統括案件で社内取引という本支店勘定相当の部門で作成されますので、案件別、部門別では独立採算の損益を把握することができ、案件全体、会社全体で集計すれば社内取引が相殺消去後の数字となります。結局オレンジの線に関するプロセスが社内取引で、独立採算管理を実現しながらも、全体を合算するとゼロになります。
以下のような仕訳が計上されます。
取引先 | 案件 | 借方 | 貸方 | 金額 | 部門 | セグメント |
顧客A | 案件1-1 | 売掛金 | 売上高 | 1,000 | 営業1課 | X, Y, Z |
社内取引先 | 案件1-1 | 費用 | 通過勘定 | 800 | 営業1課 | X, Y, Z |
社内取引先 | 案件1-2 | 通過勘定 | 売上高 | 800 | 制作部 | X, Y, Z |
仕入先B | 案件1-2 | 費用 | 買掛金 | 500 | 制作部 | X, Y, Z |
社内取引先 | 社内取引 統括案件 |
費用 | 通過勘定 | -800 | 社内取引 | X, Y, Z |
社内取引先 | 社内取引 統括案件 |
通過勘定 | 売上高 | -800 | 社内取引 | X, Y, Z |
機能説明
発注を作成
まず、発注部門は、以下の流れで社内発注用の発注レコードを作成します。
以下の例では、受注レコードから発注レコードを作成していますが、その際に仕入先として「社内取引先」を選択します。
次に、発注部門は、作成した発注レコードの発注明細に、社内取引専用の「商品・サービス」(例:社内取引)を1明細作成します。
社内取引専用の「商品・サービス」とは、「商品・サービス」の「マスタ種別」が「社内取引専用」となっているものです。
社内発注(受注部門の案件と受注レコードを作成)
発注部門は、上記で作成した発注レコードから社内発注を行います。
社内発注を行うには、発注レコードのフェーズを「契約手続き中」とした状態で「社内発注」タブから行います。
社内発注を行うことにより受注部門の案件と受注が自動作成されます。また、発注元案件と発注先案件を取りまとめる社内取引統括案件も自動作成されます。
社内納品(発注部門の検収レコードを作成)
受注部門は、通常、受注確認後、あらかじめ納品レコードを作成し、納品予定管理を行います。
また、受注部門は、社内納品機能により、同様に、あらかじめ発注部門の検収レコードを作成し、発注部門が検収予定管理を行えるようにします。
受注部門が社内納品を行うには、納品レコードのフェーズを「納品手続き中」とした状態で「社内納品」タブから行います。これにより、発注部門の検収が自動的に作成されます。
実際に納品した際には、社外取引先に対する納品と同様、受注部門は納品レコードに納品日を登録します。これにより、発注部門の検収レコードに納品日が自動登録され、検収担当者にその旨Chatter通知されます。
発注部門は、社外取引先からの納品物と同様、検査・検収し、検収レコードに検収日を登録します。これにより、受注部門の納品レコードに検収日が自動登録され、納品担当者にその旨Chatter通知されます。